タイの洪水のその後
タイを59年ぶりに襲った大洪水はおおむね収束に向かっていますが、各社影響の
判断が分かれています。
現在保険の調査として毎週現地の工業団地へ行っている方とお話しする機会が
ありヒアリングしてきました。
1 保険に関しては12月末より支払いが始まっている企業もある
(今回の洪水では保険の支払いを遅延させていると企業が潰れかねないので
関係各機関が出来るだけ迅速に動いている)
2 復旧状況に関しては、本当にまちまち。扱っている機械や部品次第。
※某大手企業(精密機械関連)は復旧に10ヶ月かかるそうです。
日本から持ってきたものをタイ仕様にカスタマイズしていたり、
特殊な環境下でテストするテスティングルームなどの機械は高価かつ、
カスタマイズに時間がかかる。
3 家屋の建材に関してはコンクリート以外に、木材を入れていることもあり、
長期間水に浸かっていたところは、ボロボロ。また天井付近まで水が来たところは
天井パネルも落ちるなど腐食が激しい企業も。
4 喫緊の課題としては、企業の資金調達。
保険が下りるのを待てない企業は、日本政府の特別融資や、親会社からの借り入れ、
などを実施しているそうです。
5 上記に挙げたように、基礎的なインフラ(道路、配電、工業用水)などは2,3ヶ月
で整備されていくとのことです。
しかしながら機械によっては洗浄しただけで利用再開できるものから、もう廃棄しかない、
保険を下りるのを待ち、再購入、日本調達するしかないケースもあります。
6 工場内機械類を入れ替えるだけで操業開始が出来るのかと言う点も
機械次第で、簡単な洗浄、特定部品の交換のみで済ませられる機械であれば
OKですが、(※ミシンなど小型のものや単純作業に付随する小型の機械などの
会社は再稼動している企業もあります。)そうではない精密機器、極小の電子部品系を
作る企業などは時間が掛かるようです。
ここから10ヶ月掛かる企業もあるそうです。
7 一番は保険がいつから利用できるか、保険会社の査定で満足するかどうか
次に代替する機械を試運転して、本格的稼動までに時間を要するため、各日系
企業様はかなり忙しい対応に追われていると思います。
水が引いたから、じゃあすぐに視察に行けるかと言うとそれは難しいと感じたそうです。
タイに工場を構える大手外国メーカーで洪水被害を受けた1000社のうち、4分の1は
操業を一部再開しているとされています。
しかし精密機械を生産するハードディスク駆動装置(HDD)メーカー(世界のHDD生産量に
おけるタイのシェアは45%に達する)、
それ以外のハイテク製品のメーカー、そして自動車メーカーによる洪水の被害の推計は
被害額の意見が分かれています。
タイでは2010年に自動車が149万台生産され、その半分が輸出されています。
被害が無かった組み立てメーカーも一次サプライヤーなどが洪水に巻き込まれ、
結果として自動車メーカー、トヨタ、日産、三菱、マツダなどは減産に追い込まれています。
今後の回復はどのように判断するのかは難しいですが、
年初から基本給与が上がり、物価上昇圧力が強まっていきます。
消費者を中心にしたマーケットは2012年上半期を通じて上昇へ向かいそうですが、
タイの工場に拠点を構える企業は、少なくとも上半期は新規投資、代替設備の準備で
コストが大きくかさむ可能性が高くなっています。
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