2015年から始まるとされるアセアン経済共同体とタイの大手企業
22015年から始まるとされるASEAN経済共同体とタイの大手企業
2015年度に入り、年初から大きな国際問題が次々と起きているが、
東南アジア諸国連合(ASEAN)は2015年を一つの区切りとして
ASEAN経済共同体を目指しており、2015年度末を開始時期として実質2016年度から開始される予定である。
ASEAN経済共同体(AEC)は、ASEAN先進6カ国
(シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ブルネイ)と
後進4カ国(ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマー)に分かれており、
2つの達成時期(2015年と2020年)を設けている。
最終的には『10カ国内での域内関税を原則撤廃するモノの移動自由化』、
『株式や債券を中心とした資本市場の一体化』、
『上級職(弁護士や医者など)の労働条件などの緩和や資本の移動』、
『域内国からの出資規制緩和』なども進むとされている。
通貨統合や人の自由な移動を促進させたEUとは異なり
ASEAN経済共同体は投資に関する自由度の向上や業界規制緩和など、経済的な協力に重きを置いている。
ASEAN域内はおよそ6億人の人口を抱えており、
日本の5倍の人口規模、中国の半分の人口規模を誇る今後成長余地の高い市場として
注目されている。さらに今後中間層の増加も予想され
日本から製造業分野の進出からサービス業分野まで幅広い進出案件が増加している。
一方で日本の進出だけでは無く、上記ASEAN経済共同体の流れを受けて
日本企業の進出・投資額を越えて、ASEAN6カ国間での企業進出や
合併・吸収、M&Aの動きが加速化している。
ASEAN域内の国境を越えた規模拡大や業界再編を目指す動きが
あらゆる業界で活発になってきているのである。
各業界で活発なM&Aの動きを見せるタイ企業
今回は成長著しい、タイ国内の企業買収の事例を取り上げる。
近年積極的にM&Aを行っているタイユニオン・フローズングループ(TUF)では、
カリフォルニア資本のバンブル・ビー・シーフードを15億USドルで購入すると発表。
TUFはここ数年に渡り数多くの買収案件を進め、
2010年にはフランス資本のMWブランドを8億8000万USドルで買収。
ノルウェー資本のキング・オスカーを8000万USドル、
フランス資本のマー・アライアンスを2億2000万USドルで傘下に収めている。
倉庫運営大手のWHAコーポレーション(WHA)は
工業団地大手のヘマラート・デベロップメント(HEMARJ)の株式22.5%を440億バーツで
取得したことを発表。かつては『鉄鋼王』と呼ばれた
サワスディ・ホルングルアン氏が創り上げたヘマラートは
タイのラヨーン県、チョンブリ県などで8つの工業団地を展開中である。
通信業界でも動きは活発化しており、中国のチャイナモバイル中国通信の子会社
チャイナ・モバイル・インターナショナルはタイの通信大手
トゥルー・コーポレーション(TRUE)の株式18%を286億バーツで購入。
トゥルー・コーポレーションの親会社は食品財閥大手のチャロン・ポカパーン・グループである。
食品・飲料業界でもタイの中間層が成長している市場で企業買収が進んでいる。
緑茶飲料大手イチタン・グループ(ICHITAN)では14年5月に
サニー・ハーブ・インターナショナル・ビバレッジから
『バヤリース』の製造工程権利を購入。これはイチタンにとってソフトドリンクへの事業拡大の一環である。
「シンハービアー」などを生産するビール事業大手シンハー・グループでは
タイ証券取引所上場企業の不動産ラサ・プロパティー(RASA)を買収。
その後RASA社の社名を変更し、シンハー・エステートとした。
資本金は47億バーツへ増資し2015年度に4つの大きな開発事業を進めることを発表。
その一つは旧日本大使館跡地で開発する
シンハー・コンプレクスで11ライ(1ライ=1,600平米)ある
バンコク中心部のアソーク地区の土地を巨大複合施設として開発する計画である。
不動産大手プロパティー・パーフェクト(PF)社はタイ不動産業界において
トップ5を目指すべく、39億バーツを投じてタイ・プロパティ、
グランド・アセット・マネジメントの2社を買収。総資産が307億バーツから452億バーツへ、
売上規模は160億バーツから222億バーツへ伸びる見通しだ。
アルコール飲料大手のジャルーン・シリワタナパクディー氏が率いる
TCCグループの2人の息子が運営するゴールデンランド・プロパティ(GOLDEN)は
14年10月にクルンテープ・ランドの株式22%を取得。
ゴールデンランドは継続して商業不動産開発、住宅不動産開発を進める。
同社は2015年度の売上目標は50億バーツを目指すとしている。
ASEAN経済統合によって「市場が伸びる」、「事業機会が増える」との予測があるなかで、
日本企業はまだまだ調査段階、フィールドスタディ段階で手探りのケースも多い。
一方、ASEAN各国の動きに合わせてタイ国内でも積極的に近隣諸国へ投資する計画を
発表しているタイの財閥、大手企業も増え始めている。
日本でも知名度が高まってくるタイやASEANの企業に注目すべき時代に入ってきている。
ASEAN ジャパン コンサルティング株式会社
代表取締役 阿部俊之
ASEAN諸国(シンガポール、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア)の
上場企業概要レポートを作成し配布しています。
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